自分の財産ですから、まずは自分の希望を優先させたいと考えるのは自然なことです。しかし、あまりに相続人の立場を無視した内容では相続人間に遺恨を残しかねません。家族の仲が悪くなってしまうのは、あなたにとっても本意ではないはずです。
また、例えば結婚して長年東京に住んでいる長男に大阪の実家を相続させても喜ばれるとは限りません。相手が喜ぶかどうかを考えるのはプレゼントを選ぶときと同じだと思います。
相続人は「少なくとも法律の規定どおりの財産は相続できる」と期待していると思っておけば間違いはありません。遺産をめぐる争いは、しばしば「納得できない」という感情的なところから生じます。なぜ法律の規定どおりでない遺産配分をしたいのか、あなたの思いが納得できるものであれば良いのです。付言事項にきちんと理由を書いておくことで、無用な争いを回避しましょう。
遺言書を作成したものの、その後に相続人の死亡などで事情が変わってしまうことも考えられます。新しく遺言書を作成し直せば済むことですが、予測できる範囲ではその場合についても指定しておくと良いでしょう。
遺言書が絶対かというと実はそうではありません。「相続人全員の合意」という御旗の下に、遺言内容を無視した遺産分割がなされることもありえます。遺言書の内容どおりのスムーズな相続手続きができるよう、遺言執行者を指定しておくと良いでしょう。
この遺言執行者ですが、利害関係のある者同士では感情的なしこりも生じかねません。なるべくなら第三者、できれば専門家に依頼するのが望ましいでしょう。